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OKRで考える人生設計

OKR(オーケーアール)という言葉をご存知でしょうか。

OKRとは「Objectives and Key Results」の略称です。GoogleやFacebookをはじめとする外資の巨人たちが使っている目標管理法です。日本でもfreeeやメルカリ、サイボウズなど、新進気鋭の企業が取り入れており、近年注目を浴びています。

OKRの特徴は、最初に「Objective」(=目標)と呼ばれる、高い目標を設定することです。この Objectiveはほどよく高いストレッチゴールを設定することが推奨されます。

設定した高い目標を目指すためには、どんな施策を行えば良いのかを考え、さらに細かいObjectivesを設定します。

最後に、「設定したObjectiveにどれだけ近づいたか」を測定するための Key Results(測定指標)を設定します。Kery Resutlsは、具体的に測定可能な数字で計測する必要があります。Key Resutsの達成率から、各メンバーがそれぞれのObjectiveにどれだけ近づいたか、を評価するのです。

このOKRは非常に強力なツールです。この手法を仕事だけではなく、個人個人の人生設計に使ってみませんか、というのが、今回の記事のテーマとなります。

OKRで人生設計をしてみよう

それではさっそく、OKRであなたの人生における目標を設定してみましょう。

話をわかりやすくするため、ここでは「Aさん」という架空の人物に登場してもらいます。

Aさん(画像はPixabayより利用)

以下はAさんの詳細です。

・年齢:29歳
・職業:IT企業の営業マン
・年収:480万円
・家族:妻が一人

Aさんは職場での評判も上々、チームメンバーとの仲もよく、順調に仕事を続けています。一方で、年収がなかなか上がらず、これから子供が産まれたら生活費がかかるではないか、と心配しています。

Aさんは、収入アップの機会があればチャンスを掴みたいと思っています。そして、家族と良い時間を過ごしたいと考えています。そして、職場で知り合った友人たちとも交流を続けていきたいと考えています。

今回は、このAさんを例に、OKRを設計してみます。

年収アップは目的?手段?

Aさんは年収アップを考えているようです。OKRで考えると、最初のObjectiveは「年収**万円をゲットする」となりそうです。

しかし、果たしてそれは正しいでしょうか。

よく読むと、Aさんの年収アップの目的は「子供が産まれた時の生活費に不安があるから、年収をあげたい」と考えているようでした。つまり、目的と手段で考えると

・目的:生活費の不安を無くしたい
・手段:年収**万円をゲットする

という関係になります。大事なのは「その目標は手段なのか、目的なのか」を考え、整理することになります。

ここが未整理のまま、「年収アップ」を目的と設定して進むと

「転職して年収アップしたけど、家に帰る暇もなく、妻とすれ違いの日々が続く。ついに離婚してまった。果たして自分の転職は正しかったのか」

と、本来の目標とまったく異なる状態になってしまうこともあり得ます。

Aさんの立場においては「生活費の不安を無くしたい」がObjectiveになり、その到達度合いを図るための測定指標が「年収」となります。

Objectiveは「理想の状態」から考える

Aさんの人生設計をさらに深ぼってみましょう。

そもそもAさんが「生活費の不安を無くしたい」のは何故か。よく読むと、その裏には「家族と良い時間を過ごしたい」という思いがあり、さらに「友人たちとの関係も大事にしたい」という思いがあります。そのために、年数をアップして、生活費の不安を解消したい、と考えているようです。

これらの関係を考えると

目標:家族や友人との仲を大切に、良い時間を過ごしたい
手段:そのために、年収をアップして生活費の不安を無くしたい

という関係に整理できます。

これが逆になると、どうでしょうか?

目標:年収をアップして生活費の不安を無くしたい
手段:そのために、家族や友人との仲を大切に、良い時間を過ごしたい

なんとなく、手段と目標がチグハグな感じがしますね。年収アップはあくまで手段で、もっと上位に大事な状態が隠れていることがわかります。

このように「本当に自分が獲得したい状態は何か」を整理し、言語化することが、OKRで最初にするべきことなのです。

理想の状態からOKRツリーを考える

Aさんが本当に獲得したい、理想の状態が見えてきました。いよいよ本格的にOKRを構築していきましょう。

今までの分析から、Aさんが本当に獲得したい状態は

「家族や友人との仲を大切に、良い時間を過ごしたい」

であることがわかりました。OKRのObjectiveに、「家族や友人と仲良く、良い時間を過ごすこと」と設定してみましょう。

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次に、最上位のObjectiveを達成するためのObjectiveを設定します。良い時間を過ごすためにAさんが必要なことはなんでしょうか。

いくつか考えられますが、最初に「年収をアップして不安をなくす」を入れてみましょう。OKRの整理で、最初の方に出てきたObjectiveですね。

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Objectiveを達成するためには、他にもいくつかの条件が必要です。

Aさんは、妻と家族と仲良く過ごしたい、という希望を持っていました。そのためには、家族に対して費やす時間が必要となります。

Aさんは、次のObjectiveとして「家族との時間を確保する」としました。

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Aさんは、家族同様、友人との時間も大切にしたいと考えています。これも大事なObjectiveです。

Aさんは、次のObjectiveに「友人と仲良く過ごす」としました。

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Aさんが目指すべき状態が具体的に見えてきました。

これが、Aさんの目標を達成するための「OKRツリー」となります。

このOKRツリー、いくらでも細かくできそうです。しかし、Objectiveを無駄に増やしても、実際に取り掛かれる施策は限られてしまい、中途半端になってしまいます。

まずは理想のObjectiveに対して、多くても3−4個のサブObjectiveに留めるようにしましょう。

計測可能なKey  Resultsを設定する

OKRツリーができたら、そのObjectiveが達成できたかどうか、測定するための KRを設定しましょう。

ここで大事なことは「具体的に測定可能な数値目標を設定する」ことです。

例えば「年収アップ」という目標に対して、「自分が満足する年収を獲得する」など、測定できない目標にすることは避けましょう。具体的に「**万円」と数値化することで、初めてOKRは威力を発揮します。数字を計測することで、抽象的な「状態目標」にどれだけ近づいているか、が、はっきりするのです。

Aさんの例で見てみます。AさんのサブObjectiveの最初は「年収アップ」でした。

Objectiveは、簡単には手が届かないストレッチゴールを設定する、と最初に書きました。年収も、ストレッチゴールで設定してみます。

AさんのKRは、現在の年収の125%アップ、「600万円」にしました。現在の額を考えると、なかなかに高い目標ですが、決して不可能な数字ではなさそうです。

続いて、残る2つの Objectivesにも、計測可能なKRを設定します。

Aさんは家族、友人との時間を作ることを大事にしています。ここでは「週末に2時間、家族と話す時間を作る」「友人たちと月に一度遊ぶ」としました。

これで、各 Objectivesに対する、KRが設定されました。

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KRを達成するための施策を考える

Objectives と、達成度を計測するためのKey Resultsができたら、最後にKR達成のための「施策」を考えます。これが目的に対する「手段」になります。

AさんのKRとして「年収125%アップ」という、具体的な目標ができました。Aさんの立場になって、どうすれば具体的に年収アップができるか考えていきましょう。

AさんはIT企業にお勤めです。Aさんの職能を考えると、IT系の知識を獲得することが、年収アップへの近道となりそうです。営業ということで、人脈・ネットワークの構築も大きな意味を持ちそうです。

年収アップの手段として「転職」があります。転職も具体的に考える価値がありそうです。転職先には内資だけでなく、外資系も候補に入るでしょう。そうなると語学も重要な意味を持ちそうです。

以上から、AさんのOKR達成のために、次のような施策を考えてみました。

・IT資格を2つ獲得する(IPA系、ベンダー系、etc..)
・勉強会に月1回参加し、SNSの知人を100人増やす
・転職サイトに登録し、レジュメと職務経歴書を完成させる
・英語の勉強を始め、TOEIC700点を目指す

具体的、かつ測定可能な施策が出てきました。

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施策ができたら、その施策を達成するための具体的なアクションを考えます。これを「アクションアイテム」と呼びます。

Aさんの例で見てみましょう。IT資格の取得、そして英語の上達のためには、一にも二にも勉強が必要です。そのためには、毎週・毎月、一定の時間を勉強に充てるのが良さそうです。

転職サイトにレジュメ・職務経歴書を掲載するには、まず転職サイトにアカウントを作らなければいけません。

以上のように整理を行い。アクションアイテムを以下のように整理してみました。

・IT資格取得のためのアクションアイテム
→ IT系資格の参考書を購入する
→ 勉強のための参考サイトをブックマークする
→ 週に2回、2時間の勉強時間を作る

・英語上達多のためのアクションアイテム
→ 英語の学習教材を探す
→ 週3回、30分英語の勉強時間を作る

転職サイトに登録し、レジュメと職務経歴書を作成するためのアクションアイテム
→ 転職サイトにアカウントを作る
→ 自分のこれまでの業務を棚卸しして、書き出す

人脈を増やすためのアクションアイテム
→ SNSにアカウントを作る
→ 知人たちと繋がる
→ 勉強会を探し、参加登録する
→ 参加者、登壇者と意見交換をし、SNSで繋がる

これで、「年収アップ」のためのOKRツリーと、測定可能なKR、そしてKRを達成するための施策、アクションアイテムが完成しました。

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ここまで整理できたら、もう怖いものはありません。Aさんは、目標に向かって進んでいけることでしょう。

OKRは人によって異なる

今回は、Aさんという架空の人物を元に、OKRで人生設計を考えてみました。

このOKR、人によってObjetiveは異なります。「自分で会社を起業したい」「一生を共にするパートナーと出会いたい」「不安のない老後を送りたい」などなど、千差万別になることでしょう。

大事なのは、一見壮大に見える「目標とする状態」を言語化すること。そして、その状態に到達するための目標、そして目標に近づいているかどうか、具体的に計測できる数字目標を設定することです。

上手にOKRが設定できたら、きっと日々の生活の迷いが減り、充実した日々が送れることでしょう。

OKRについてもっと知りたくなったら

Googleは、自社のサイトでOKRの解説を公開しています。

(「OKRを設定する」)

OKRについて詳しく知りたくなったら、ぜひGoogleさんが公開しているガイドページもご覧ください。

(タイトル画像はPixabayから引用)